医療用クランプとは、チューブや血管などを挟んで遮断する行為、もしくはそのために用いるクリップや鉗子のことです。点滴の流量調節をはじめ、カテーテル・ドレーン管の一時的な閉塞、手術時の血管把持など、幅広い医療現場で使用されます。
プラスチック製の医療用クランプは、ディスポーザブルの医療器具として毎日大量に消費されるため、高い安全性とともにコストパフォーマンスの最適化が求められます。
こちらでは、設計・調達担当者に向けて、医療用クランプ部品の種類や適した樹脂素材、加工法や製造ライン設計のポイントを解説します。医療機器向けプラスチック部品の製造委託を検討している方は、ぜひご覧ください。
医療用クランプには、流量を微調整するのか、ワンタッチで完全に止めるのかといった目的によって機構の異なる複数の種類が存在します。ここでは、代表的な医療用クランプの種類を解説します。
点滴ライン(輸液セット)で非常によく見かけるタイプです。ローラーを親指で上下に転がすことにより、チューブの潰れ具合を無段階で調整します。一滴ずつの流量を正確にコントロールする重要な役割を持ちます。
V字型の細いスリットが開いた板状のパーツです。チューブをスリットの奥へ押し込むことによって完全に潰し、液体の流れをワンタッチで遮断します。操作が単純で、素早く流路を閉じたい場面に適しています。
洗濯ばさみのような構造でチューブを挟み込み、ロック機構によって流れを止めるタイプです。片手で簡単に操作できるのが特徴であり、一時的な閉塞を繰り返す際などに重宝します。
クランプ部品には、チューブを潰すための適度な硬さや、医療従事者が手でスムーズに操作しやすい設計が求められます。ここでは、各クランプの特性に適した代表的なプラスチック素材を紹介します。
耐摩耗性が高く、自己潤滑性(表面がツルツルして滑りやすい性質)に優れるエンプラ素材であり、回転運動を伴うローラークランプのローラー部分に向いています。強度や剛性、耐衝撃性に優れ、長期の荷重による変形が少ない性質も持ち合わせています。
適度な弾力性と強度を持ち、軽量で材料コストも低い汎用プラスチックです。ローラークランプの本体やスライドクランプなどに広く採用されます。透明性や耐薬品性にも優れるため、大量消費される医療用ディスポーザブル製品に適した素材といえます。
ポリカーボネート(PC)やABS樹脂は、高い耐衝撃性と剛性を持つ素材です。強い力でチューブを遮断し続ける必要があり、より高い強度が求められるピンチクランプの本体部品などに採用されます。
大量生産と高品質を両立するため、医療用クランプの製造では以下のような加工・生産体制が求められます。
短いサイクルタイム(成形時間)で、一度に数十個のクランプ部品を作る技術です。多数個取り金型を用いた射出成形が基本となり、1ショットあたりの生産数を最大化することで、製品単価を大幅に抑えることが可能になります。
ローラークランプのように複数のパーツからなる製品は、成形後、人の手を介さずにパーツ同士をはめ込む全自動ラインを構築するのが理想的です。生産効率が向上するだけでなく、クリーンルーム内における人由来の異物混入リスクを低減できます。また、組み立て工程にカメラ検査などを組み込めば、外観や寸法の不良品を自動で検知する仕組みも構築可能です。
医療用クランプを製造するうえでとくに注意すべきポイントは、チューブを傷つけないバリレス成形や流量調整を狂わせない緻密な寸法精度です。以下に3つのポイントを解説します。
クランプ製造において、成形時に生じる樹脂の「バリ」には細心の注意が必要です。シリコーンや塩ビなどの柔らかいチューブをクランプで強く挟み込んだ際、クランプの角に微小なバリが残っていると、チューブに穴が開き、致死的な液漏れや空気混入を引き起こす危険性があります。
そのため、後工程でのバリ取りに頼るのではなく、金型の合わせ精度を極限まで高め、最初からバリを出さないバリレス成形の技術力が製造メーカーには求められます。
ローラークランプの場合、本体のレール幅やローラーの直径がわずかでも歪んでいると、「ローラーが重くて回らない」「逆にスカスカで、設定した点滴スピードが勝手に変わってしまう」といった重大な不具合につながります。
樹脂の収縮や反りを正確に計算し、スムーズな操作感と確実な閉塞を両立する寸法安定性を確保することが重要です。
ディスポーザブルのクランプは、厳しい品質基準を満たしつつ、製品単価をどれだけ抑えられるかが市場での競争力を左右します。金型のキャビティ数(一度に取れる個数)を増やすための流動解析技術や成形から組み立て・梱包までをインラインで自動化する生産技術を持つメーカーを選ぶことが成功の鍵です。
単に図面通りに作るだけでなく、トータルでのコストダウンや生産性向上の提案ができるメーカーかどうかを見極める必要があります。
点滴の流量調節やカテーテルの一時的な閉塞などに使用される医療用クランプは、材料選定や金型精度の管理が品質を大きく左右します。また、医療現場で用いるプラスチック部品である以上、クリーンな環境での成形・組み立て工程を徹底することも不可欠です。
医療用クランプの製造を委託するメーカーを選定する際は、品質と安全性、耐久性、操作性を担保する技術力に加え、大量生産に向けたコスト最適化のノウハウがあるかを確認し、自社のニーズに見合うパートナーを慎重に比較検討しましょう。
以下のページでは、医療用プラスチック部品の製造に対応している加工・成形メーカーを紹介しています。委託先選びの比較検討に、あわせてお役立てください。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325