シリンジ(注射器)は、医療現場において採血や注射などの医療行為で頻繁に用いられる器具の一つです。かつてはガラス製のものが多く用いられていましたが、現在では軽量で割れにくく、コスト面でもメリットの大きいプラスチック製(使い捨てのディスポーザブルタイプ)が主流となっています。
一見すると単純な構造に見えるシリンジですが、薬液を正確に計量し、漏れを防ぎつつスムーズに注入するためには、成形メーカーによる高度な精密加工技術が欠かせません。
シリンジは主に3つのパーツで構成されています。それぞれのパーツに求められる機能が異なり、部品ごとの設計精度が製品全体の品質を左右します。
薬液を保持する筒状のパーツです。内部の薬液や血液の状態を確認できるよう高い透明性が求められるほか、耐薬品性や正確な目盛りの印字も必要です。先端部は注射針やチューブと接続するルアー形状になっており、国際規格(ISO80369シリーズ)に準拠した成形が求められます。
ガスケットを押し出すための棒状パーツです。ガスケットに装着し、シリンジ内の薬液を押し出す役割を担います。バレル内でたわむことなく、安定した圧力を伝えるための剛性が必要です。
プランジャーの先端に取り付けられるゴムなどの弾性体パーツです。バレルとの密着性を保って液漏れを防ぐ「シール性」と、押し引きの際に滑らかに動く「摺動性(しゅうどうせい)」を両立させる必要があります。
シリンジ製造では、単回使用するのか、それとも薬液を充填したまま保管するプレフィルドシリンジなのかといった用途に応じて適した素材選定を行う必要があります。
シリンジにおいて一般的な素材の一つです。耐薬品性とコストのバランスに優れているのが特徴で、熱に強く、薬品に反応して劣化や変形を起こしにくいというメリットがあります。
ガラスに近い透明度と低い吸着性を持つ高機能樹脂のことです。長期保存が必要なプレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)において、薬液の安定性を保つために採用されます。高温環境下での使用が可能な点も特徴です。
主にガスケット部分に使用される素材です。近年は、潤滑剤として塗布されるシリコーンオイルによる薬液への影響を避けるため、オイルフリーでも滑りの良い素材を選定するのがトレンドになっています。
シリンジは大量生産が前提となるため、部品の製造には多くの場合で射出成形が採用されています。ここでは、主な製造・加工技術について解説します。
バレルの内径にわずかな歪みやテーパ(傾き)があると、液漏れや動作時の引っかかりの原因になりやすいため、ミクロン単位での均一な厚みを維持する金型技術が求められます。大量生産においても高い品質を保つため、精密な金型設計技術が不可欠となります。
金型内にヒーターを組み込み、樹脂を加熱・溶融した状態のまま製品部(キャビティ)へ流し込むシステムです。この仕組みを取り入れることで、途中で樹脂が冷え固まることによる材料ロスを減らし、生産サイクルを短縮できる点がメリットです。
また、多数の型へ均等に樹脂を流し込みやすくなるため、個体差のない安定した品質での量産が実現しやすくなります。
成形後に、正確な目盛りの印刷や摺動性を高めるためシリコーンコーティングなどの二次加工が行われる場合があります。
ここでは、医療用シリンジのプラスチック部品製造をメーカーに委託する際などに、注意しておきたいポイントについて解説します。
注射する際に、押し出しが重すぎたり逆に急に軽くなったり(スティックスリップ現象)すると正確な投与が困難になる可能性があります。成形品の真円度や表面の粗さ、素材の組み合わせなど、数値化されたデータに基づき摺動性能を保証できるメーカーかどうかが重要です。
誤接続防止のため、シリンジ先端のルアーコネクタ形状は厳格に規格化されています。これに適合しない成形品は、医療事故に直結するリスクがあるため、規格について熟知し、検査体制が整っているメーカーを選ぶ必要があります。
シリンジは滅菌済み製品として出荷されることが多いため、クラス7〜8程度のクリーンルーム内での成形・組み立てが必須条件となっています。人手を介さない自動組み立てラインを備えるメーカーであれば、異物混入リスクをなるべく抑えながら、コストダウンを図れるでしょう。
医療現場で用いられるシリンジには、薬液を正確に計量し、液漏れを防ぎながらスムーズに注入するための高度な精密加工技術が欠かせません。
製造を委託するメーカーを選定する際は、国際規格について熟知し、厳格な検査体制が整っているかを確認するほか、クリーンルームを完備しているかどうかも併せてチェックしておくことが大切です。
以下のページでは、医療用プラスチック部品の製造に対応している加工・成形メーカーをご紹介しています。委託先選びの比較・検討に、あわせてお役立てください。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325