医療用チップ(ピペットチップ等)は、病気の診断や健康管理、さらには創薬研究などに欠かせない検体検査を支える重要なディスポーザブル用品です。微量な液体を正確に計量・分注する役割を担うため、製造段階においてわずかな寸法ズレや成形不良も許されません。
こちらでは、医療機器の設計・開発・調達担当者の方に向けて、医療用チップの樹脂部品を加工する際に知っておくべき種類や適した素材、具体的な製造手法、品質を左右する重要ポイントを解説します。
医療用チップには、取り扱う検体の性質や分注機器の仕様に合わせて複数のバリエーションが存在します。代表的な種類とその役割は以下の通りです。
最も汎用的な形状のチップであり、手動のマイクロピペットや自動分注機などの先端に装着して使用します。一般的な水溶液や試薬の計量・移動に広く用いられる基本タイプです。
チップの内部(上部)に疎水性のフィルターを内蔵した構造を持ちます。検体を吸引した際、エアロゾル(微小な飛沫)がピペット本体のノズルに侵入するのを防ぐため、PCR検査などコンタミネーションを厳格に防ぐ必要がある場面で必須となるチップです。
樹脂表面の特性を改良し、内壁に液滴が残留しにくいよう設計された高機能チップです。界面活性剤を含むサンプルや粘度の高い液体のほか、高価な試薬や微量しか採取できない貴重な検体を、無駄なく正確に分注する目的で重宝されます。
深い試験管や細長い容器の底まで確実に届くよう、全長を長く設計したタイプです。容器の壁面にピペット本体が触れるリスクを減らし、コンタミネーションの防止や作業効率の向上に貢献します。
医療用チップは薬液や生体サンプルと直接接触するため、化学的な安定性、不純物の溶出のなさ、そして液体の弾きやすさ(疎水性)が素材選びの絶対条件となります。
医療用チップのベースとして最も標準的に採用される樹脂素材です。優れた耐薬品性と疎水性を持ち、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ処理)の熱にも耐えられる特性から、医療・バイオ分野の消耗品製造に広く適応しています。
吸引した液体の量や気泡の有無などを目視で正確に確認できるよう、透明度を極限まで高めた特殊グレードのポリプロピレンです。光学的な検査機器を使用する際にも有利に働き、医療用チップの信頼性を高めるために不可欠な素材となっています。
素材単体ではなく、成形時にシリコーンフリーの滑剤などの添加剤を樹脂に配合する技術です。タンパク質やDNAがチップ内壁へ吸着するのを物理的・化学的に防ぐことで、低吸着チップの液残り防止効果をより強固なものにします。
使い捨て製品である医療用チップの製造は、「シビアな寸法精度を維持したまま、いかに大量かつ低コストで安定生産できるか」が重要です。そのため、高度な金型技術とクリーンな生産環境が求められます。
チップ先端の吐出口は、直径がわずか数ミクロンずれるだけで分注量に誤差が生じます。この誤差を防ぐため、ミクロン単位の超精密な金型加工技術と、樹脂の温度・圧力を制御する成形条件の徹底管理が必要です。医療機器の進化を根底から支える高度な成形技術といえます。
生産効率を高めるため、1回の射出成形で16個、32個、あるいは64個以上といった複数のチップを同時に作り出す「多数個取り」が採用されます。ランナー(樹脂の通り道)の設計を最適化し、すべてのキャビティ(空洞)へ均一な圧力で樹脂を流し込む高度なノウハウが欠かせません。
衛生管理の観点から、ISO基準を満たすクリーンルーム内で成形を行い、ロボットが自動で製品を取り出してラックやケースへ収納する完全自動化ラインが理想です。人の手が一切触れない製造工程を構築することで、DNAやRNase、菌などの混入リスクを排除し、品質の均一化を実現します。
医療機器のプラスチック部品を製造する
おすすめメーカー3社をチェック
製造委託先(成形メーカー)を選定する際、品質を大きく左右する以下の3つのポイントをクリアできる技術力があるかを確認する必要があります。
チップの先端(吐出口)に成形時のバリがわずかでも残っていると、液切れが悪化し、液滴が斜めに飛んだり外壁に伝い落ちたりする原因になります。これは検査エラーに直結する致命的な欠陥です。金型のパーティングライン(合わせ目)の極小化技術や、二次加工を必要としないバリレス成形の実績を持つメーカーを選ぶことが必須となります。
自動分注ロボットで使用されるチップの場合、製品がわずかに湾曲していたり、先端の中心軸がずれていたりすると、ノズルがラックから正確にピッキングできず、機器の衝突や停止を招きます。細長い円錐形状を真っ直ぐ、かつ均一な肉厚で成形する偏肉防止の高度なノウハウが問われます。
「1番のキャビティで作ったチップは正確だが、32番のチップは寸法が異なり液残りが生じる」といった、同じロット内での個体差は臨床検査において絶対に許されません。金型内の温度分布やホットランナーの圧力を均等に保つマルチキャビティ制御技術を有し、すべての穴で寸分違わぬ品質を担保できるかどうかが委託先選定の要となります。
医療用チップは、病気の診断や健康管理、研究開発における検体検査の精度を左右する極めて重要な消耗品です。大量生産が前提となるため、高い生産効率を維持しつつ、ミクロン単位のシビアな寸法精度と厳格な衛生基準をクリアすることが求められます。
素材には、耐薬品性と疎水性に優れたポリプロピレン(PP)などが適しています。製造委託先を選定する際は、単に設備を保有しているかだけでなく、「バリレス成形による液切れの確保」「同芯度の担保(偏肉防止)」「多数個取りにおける個体差の抑制」という、3つの高度な要件を満たせる技術力を見極めることが重要です。
以下のページでは、精度の高い医療用プラスチック部品の製造に対応した加工・成形メーカーを整理しています。自社が求める基準を満たす委託先選びの比較・検討の参考にしてください。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325