医療分野におけるマニピュレーターとは、内視鏡下手術などで医師の手の代わりとなり、複雑な処置を行う手術支援ロボットのアームや鉗子(かんし)、およびその操作部を指します。
患者の身体的負担が少ない低侵襲手術の普及に伴い、マニピュレーターの需要は増加し続けています。軽量化による操作性の向上や、電気メス使用時の絶縁性確保を目的として、金属部品を代替する高性能なプラスチック部品が多く採用されるようになっています。
マニピュレーターは、医師が直接触れるマスター側(操作部)と、患者の体内へ挿入されるスレーブ側(アーム・鉗子部)に分かれており、それぞれ求められる要件が異なります。
医師が長時間握って操作するハンドル部分です。操作者が疲れにくく、直感的な操作を行えるように、人間工学に基づいた複雑な三次曲面の樹脂カバーやボタン類が使用されます。
患者の体内へ挿入される金属製シャフトを覆うパーツです。周辺組織への熱損傷や感電を防ぐための高い電気絶縁性と、生体適合性が必須となります。
また、先端の処置具は、組織を把持・切断する際に絶縁部が確実に遮蔽する構造となっていることが重要です。
ワイヤーの巻き取りなど、微細な動きを正確に伝えるための極小サイズのギアやプーリーです。摩耗しにくく滑りの良い樹脂が使われる傾向にあります。
手術や処置に使用されるマニピュレーターは、使用後にオートクレーブ(高温高圧蒸気滅菌器)による徹底した洗浄・滅菌処理が繰り返し行われます。
そのため、汎用プラスチックではなく、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)が多用されるのが一般的です。
樹脂の中でも最高レベルの耐熱性や耐薬品性、機械的強度を誇る素材です。高い耐加水分解性を持ち、オートクレーブ滅菌を繰り返しても性能が劣化しにくいことから、医療機器の部品に非常に適しています。金属の代替として、マニピュレーターのコア部品に採用されることもあります。
高い透明性や耐加水分解性、耐薬品性、耐衝撃性を活かし、高い安全性が求められる分野で使用される素材です。滅菌装置や医療用トレーなどのほか、食品容器や調理器部品としても利用されています。
PEEKと異なり着色が容易なため、手術中に器具の種類を視認しやすくするためのカラーパーツなどに適しています。
耐摩耗性や自己潤滑性に優れているため、関節部のギアやプーリーなど、グリスアップ(潤滑油の塗布)が難しい駆動部品に適した素材です。
マニピュレーターの部品は極めて高い強度が求められるケースが多く、製造法にも特殊なノウハウが必要です。代表的な製造法は以下の通りです。
インサート成形とは、あらかじめ金型内に金属ピンやシャフトなどの部品を配置し、その周囲に樹脂を流し込んで一体化させる成形技術です。樹脂の絶縁性・軽量性と、金属の高い剛性を両立させることができます。
スーパーエンプラは融点が高く射出成形が難しいため、開発初期のプロトタイプ作製や多品種少量生産では、樹脂ブロックからの5軸切削加工が選ばれることが多いです。その後、量産化の段階で射出成形に切り替えるなど、柔軟な工法選択が求められます。
品質の高いマニピュレーター部品を製造するためには、委託先のメーカー選びが重要になります。主なチェックポイントは以下の3つです。
PEEKなどのスーパーエンプラを射出成形するためには、一般的な樹脂よりもはるかに高温(300℃〜400℃以上)で金型を緻密に温度管理する設備と技術が必要です。温度管理が不十分な場合、樹脂が本来持つ強度や耐熱性が発揮されず、滅菌時に部品が変形する恐れがあります。
精密な機能と過酷な使用環境の両立には、徹底した温度管理のノウハウが欠かせません。
マニピュレーターの先端部分は極めて小さいため、金属と樹脂を寸分の狂いもなく一体化させなければなりません。
金属と樹脂の熱膨張率の違いを緻密に計算した上で金型を設計し、成形後の割れや剥がれを防ぐ、高度なインサート成形の実績が問われます。
マニピュレーターの複雑な構造を理解していることはもちろん、量産化を見据え、試作段階から「この部分は樹脂で成形可能か」「金属から樹脂への置き換えでコストダウンや軽量化が図れないか」といった提案ができる成形メーカーを選ぶことが重要です。
初期開発からの設計支援(VA/VE提案)に対応しているメーカーを選ぶことが、プロジェクト全体の成功を左右すると言えるでしょう。
医療分野におけるマニピュレーターとは、内視鏡下手術などで医師の手の代わりとなり、複雑な処置を行う手術支援ロボットのアームや鉗子、操作部などを指します。
マニピュレーター部品の製造を委託するメーカー選定では、インサート成形の技術力やスーパーエンプラの加工実績を確認するのはもちろん、初期開発からの設計支援を行っているかどうかも重要な判断基準となります。
以下のページでは、医療用プラスチック部品の製造に対応している加工・成形メーカーをご紹介しています。委託先選びの比較・検討に、あわせてお役立てください。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325