ドレインチューブ(以下、ドレーン)は、主に医療現場の術後管理などで使用される医療機器の一つです。体内に貯留した血液や膿、浸出液を体外に排出する医療行為ドレナージの際に用いられます。この管には、身体へのなじみやすさや柔軟性が求められるため、医療用のプラスチックやシリコーン素材が多く採用されています。
適切な柔軟素材を用いたドレーンは、患者の不快感や痛みを軽減し、早期離床やリハビリテーションを促進するため、術後管理において大きな役割を果たします。そのため、製造においては素材の特性を活かしつつ、高い安全性を確保する加工技術が求められます。
ドレインチューブは、主にシャフト(管本体)と排液・排気を行う側孔(そくこう)、そして体外の機器をつなぐ部品で構成されています。ここでは、各部品の役割と製造時に考慮すべき点について解説します。
体内に留置されるメインの管となる部分です。排液の詰まりや停滞を防ぐために、内壁の平滑性と折れ曲がりにくい(耐キンク性)構造が求められます。長尺のチューブを外径・内径のばらつきなく連続生産するには、押出成形時の厳密な条件出しが必要です。
チューブ先端付近の側面に複数開けられた、排液を吸い込むための穴のことです。用途や排出する体液の粘度によって、穴の大きさや配置パターンが異なります。側孔を複数設けることで、一部が組織に埋もれても他の穴からドレナージを維持できます。製造工程においては、指定されたパターン通りに精度よく穴をあけ、周囲を滑らかに仕上げる加工技術が品質を左右します。
チューブの先端が体内のどの位置にあるかをレントゲン(X線)で確認できるよう、チューブの肉厚内に埋め込まれた放射線不透過性のラインです。このラインが剥離したり途切れたりすると正確な位置確認ができないため、ベースとなる樹脂と造影剤入りの樹脂をムラなく一体化させる共押出の技術が問われます。
体外に出たチューブと排液を回収する排液バッグ(リザーバー)などを接続するためのジョイント部品です。患者側から伸びるチューブと回収容器側を液漏れなく安全につなぐ役割を担います。使用中の外れや漏れを防ぐため、チューブとの接合部の寸法精度や密着性を高める成形技術が求められます。
素材の選定は、体内への留置期間、排出する液体の性質、求められる物理的強度に合わせて行われます。それぞれの素材の特徴と加工上の留意点を整理します。
ドレインチューブで多用されている主流の素材です。柔軟性と弾性に富み、耐熱性・耐寒性・絶縁性にも優れています。柔らかく患者への物理的な負担が少ないうえ、生体組織と癒着しにくいため抜去時の痛みを軽減できるのが特長です。ただし、成形には液状シリコーンゴム(LSR)成形などの専用設備やノウハウが必要になるため、対応可能なメーカーをあらかじめ確認しておく必要があります。
適度な柔軟性があり、透明度が高いため排液の色や性状、量の目視確認が容易な素材です。比較的短期間のドレナージやコストを抑えたい使い捨て(ディスポーザブル)用途で採用されるケースが多く見られます。大量生産に向いていますが、医療グレードの材料を用いた安定した押出加工の体制が求められます。
ポリウレタンはシリコーンよりもコシ(剛性)があり、血栓が付着しにくい性質を持っています。血管周辺や特定のドレナージ用途で使用されることが多い素材です。程よい強度と柔軟性を併せ持ち、薄肉でも内腔を広く取れるため閉塞しにくいという特徴があります。一方で、温度変化に敏感で成形時の条件管理が難しいため、加工実績のある委託先選びがポイントになります。
ドレインチューブ本体やコネクタ部品を製造するための代表的な加工法とその選定理由について解説します。
チューブ本体(シャフト)の製造には、プラスチックやゴムの押出成形や共押出成形技術が採用されます。断面形状が一定の管を連続して生産するのに適した工法です。ベースとなる透明樹脂とX線造影剤を練り込んだ樹脂を同時に押し出して一体化させることで、造影ライン入りのチューブを効率よく製造できます。
押し出されたチューブの側面へ、専用の金型(パンチングマシン)やレーザー、ドリルなどを使用して正確に排液用の穴を開ける二次加工です。単に穴を開けるだけでなく、切粉を確実に除去し、加工面の品質を保つ工程管理が不可欠です。
複雑な形状のコネクタ部品の製造には射出成形が用いられます。また、軟質チューブと硬質のコネクタ部品を一体化して、密封性を確保する場合にはインサート成形が適しています。異材質同士を液漏れなく強固に接合するため、材料の相性を見極めた成形条件の設定が求められます。
医療用ドレーンの金型設計や加工技術は、高い安全性と精密さが要求される領域です。設計・調達担当者が製造委託先を選定する際に確認しておきたい3つの技術的ポイントを解説します。
ドレインチューブ製造において、品質の差が出やすいのが側孔の加工です。チューブに穴を開けた際、樹脂のササクレ(バリ)や角立ちが残っているとチューブ抜去時に体内の組織を傷つけて出血や痛みの原因となります。通常の穴あけだけでなく、熱や特殊な研磨処理を用いて穴のフチを滑らかに丸める(エッジレス)加工技術を持っているかが重要な判断基準になります。
患者の寝返りなどでチューブが折れ曲がり(キンクし)、排液が止まってしまうと合併症を引き起こすリスクがあります。柔らかさを保ちながら折れ曲がりを防ぐには、「チューブの断面形状を星型やスリット入りにする」「内壁に補強リブを設ける」といった構造の工夫が必要です。これを実現するための、複雑な特殊形状を押出成形で形にする金型設計ノウハウの有無を確認しましょう。
造影ラインをチューブの肉厚内へ均一に埋め込む共押出技術は、高度な温度管理と圧力制御を要します。ラインの幅や深さにブレが生じるとレントゲンに正確に映らないだけでなく、チューブ自体の強度低下や裂けの原因にもつながります。複数の樹脂を高精度でコントロールし、剥離や段差なく一体成形できる実績を持つメーカーを選定することが大切です。
ドレーンは、体内に貯留した血液や浸出液などを体外に排出する「ドレナージ」に欠かせない医療機器です。その製造においては、患者の安全に直結する側孔のエッジ処理、耐キンク性を実現する複雑な断面形状の押出、造影ラインの共押出など、細部にわたる加工技術が求められます。
委託先を選定する際は、単なるプラスチック成形技術だけでなく、「なぜその加工・素材が必要なのか」を深く理解し、医療用ドレーン特有の金型設計ノウハウと実績を持つメーカーを見極めることが成功の鍵となります。
以下のページでは、品質管理体制を備え、医療用プラスチック部品の製造に対応している加工・成形メーカーをご紹介しています。委託先選びの比較・検討に、ぜひお役立てください。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325