塩化ビニール(PVC:ポリビニルクロライド樹脂)も、医療機器や現場の用具に多用される樹脂素材のひとつです。塩化ビニールの特徴や物性、成形される医療機器部品などについて紹介します。
耐水性に優れている点はもちろん、機械的物性にも優れ、特に強度や耐候性の点で特徴のある樹脂です。酸やアルカリにも強く耐薬性も認められますが、有機溶剤には弱い素材です。
塩化ビニールは、添加する可塑剤によって硬質と軟質にわけられます。物性値をコントロールすることで用途や環境などにあわせて自由に加工できる点でも、塩化ビニールの特徴でしょう。
加工の点でいうと、切削、曲げ、溶接、接着などさまざまな加工に対応している点も特徴です。そのため多様な成形品がつくりやすく、医療分野でも汎用性の高い樹脂のひとつです。安価な製造コストも魅力でしょう。
医療機器プラスチック部品製造会社3選の
塩化ビニールの取り扱いを確認
酸やアルカリに強い樹脂ですが、一部の有機溶剤には使用できない点に注意が必要です。
| 耐酸性 | ○ |
|---|---|
| 耐アルカリ性 | ○ |
| 有機溶剤 | △ |
参考:株式会社ハンシン「樹脂素材物性表」(PDF)https://www.kk-hanshin.co.jp/contents/pdf/jushi.pdf
以下の機械的特性は硬質の塩化ビニールの参考値です。一般的には、軟質よりも硬質のほうが機械的特性はよいとされます。
| 比重 | 1.4 |
|---|---|
| 引張強度(kgf/cm2) | 530-650 |
| 破断時伸び(%) | 35-60 |
| 引張弾性率(MPa) | 25-41 |
| 圧縮強度(MPa) | 750-850 |
| 曲げ強度(MPa) | 700-1000 |
| 曲げ弾性率(kgf/cm2) | 32 |
| 硬度(ロックウェル) | 65-85 |
参考:株式会社ハンシン「樹脂素材物性表」(PDF)https://www.kk-hanshin.co.jp/contents/pdf/jushi.pdf
塩化ビニールの弱点は、耐熱性です。-20℃で脆化して80℃前後で軟化する、使用温度範囲の狭い樹脂でもあります。
| 連続耐熱温度(℃) | 76 |
|---|---|
| 熱膨張率(×0-5) | 7 |
| 荷重たわみ温度(℃) | 80 |
参考:株式会社ハンシン「樹脂素材物性表」(PDF)https://www.kk-hanshin.co.jp/contents/pdf/jushi.pdf
軟質の塩化ビニールだとチューブ類やパッキン類に、硬質だと配管や筐体のカバーニなど、医療現場でさまざまな塩化ビニールが活用されています。具体的には、輸液セット、人工透析血液回路、酸素濃縮器内配管、ローラーポンプ用チューブ、補聴器用の延長チューブ、カニューラ、人工呼吸器用保護カバーなどがあります。
硬質・軟質以外にも、塩化ビニールにはフタル酸を使用していないグレードなども登場しています。医療機器に使われるプラスチック部品は多種多様ありますから、つくりたいものに適した素材を選ぶうえでも、さまざまな選択肢のあるプラスチック加工メーカーに依頼することが重要なポイントになります。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325