医療用プラスチックに求められる重要な機能のひとつが、「樹脂の耐薬性」です。酸やアルカリ、有機溶剤などの耐薬性に優れた樹脂の見分け方や、その種類についてお伝えします。
医療現場で使用される薬品には、有機溶剤、塩類、アルカリ、酸類、酸化剤といった種類があります。医療用プラスチックに使われる素材は、これらの薬品に一定時間浸しても溶解や変形などしない、耐薬性に優れた樹脂を選ぶことがポイントのひとつです。
耐薬性に優れた樹脂には、ポリエチレン(PE)、フッ素樹脂(PTFE)、ABSなどいくつかありますが、すべての薬品に耐えられる樹脂は存在しません。そのため、使用する薬品にあわせて素材を選ぶ必要があります。
プラスチック樹脂の耐薬性については各試験機関で評価されており、一覧表などでまとめられています。
ここでは、おおまかな分類として医療現場でよく使われている「酸・アルカリに強い樹脂」「有機溶剤に強い樹脂」について解説します。
酸やアルカリに強い樹脂の代表格には、ポリエチレン(PE)、ABS、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)などがあります。
このうちポリエチレンは、酸にもアルカリにも強い樹脂として耐薬性に優れた樹脂です。加工性にも優れており、医療用プラスチックをはじめ幅広い産業分野で使用されています。
ABSも酸・アルカリともに強い素材です。有機溶剤には溶けやすいため使用されることはありませんが、接着性や塗装性にも優れており、モデル用切削素材にも使われます。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、あまり聞きなれない名前かもしれませんが、「テフロン」という商品名ならご存じの方は多いと思います。耐薬性と耐熱性に優れた樹脂で、先端技術分野でも幅広く活用されています。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)は、酸やアルカリに加えて有機溶剤にも耐える耐薬性があります。耐熱性や強度も高い素材ですが、原料費が高価な点がネックとなる素材です。
このほか、以下の樹脂も酸またはアルカリに強い樹脂として知られます。
その他、酸・アルカリに強い樹脂
…など
有機溶剤に強い樹脂には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアセタール(POM)、フェノール樹脂(PF)などがあります。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は先ほど紹介した通り、酸やアルカリにも強い樹脂です。
ポリアセタール(POM)は、強度の高いプラスチック蒸気滅菌処理などの滅菌にも優れた耐性をもちます。なお、複数のグレードがあるため薬品の種類に応じて選ぶこともポイントです。
フェノール樹脂(PF)も、有機溶剤に強い樹脂で耐酸性もあります。ただし、耐アルカリ性には劣る樹脂ですから、注意が必要です。
そのほか、一部の有機溶剤に強い樹脂として以下が挙げられます。
その他、一部の有機溶剤に強い樹脂
…など
医療機器に使用するプラスチックは、自社のニーズに合わせて柔軟に対応してくれるメーカー選びも重要です。
耐薬性に優れた樹脂でも、薬品を使うシーンや保管時の温度などによっては適さない素材もあります。たとえば、耐摩耗性・耐衝撃性といった耐久性や、耐熱性の観点も含めて選ぶこともポイントです。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325