医療用プラスチックは煮沸消毒などの衛生管理や使用環境の観点から、「樹脂の耐熱性」が求められることも多いです。耐熱性に優れた樹脂の見分け方や、その種類について紹介します。
プラスチックに限らず、あらゆる素材には対応できる熱の範囲(耐熱温度)があります。樹脂でいうと、塩化ビニル(塩ビ・PCV)の耐熱温度は60~80℃ですから、煮沸消毒をするケースには適さない素材です。
塩化ビニルのほかにも、樹脂によっては高熱または低温環境において変形や溶解など品質に影響を及ぼす素材もありますから、素材ごとの熱的性質を理解するとともに使用環境や用途に適した樹脂を選ぶことがポイントになります。
また、プラスチックを成形する場合においても熱的性質が重要で、加工メーカーには素材ごとの特性を把握したうえで製作することも求められます。
プラスチックの耐熱性を調べる際には、樹脂が有する以下の物性(熱的性質)が参考になります。
上記の項目を素材ごとに調べることで、常時使用できる温度や変形などが生じる温度といった耐熱性を把握できます。
なお、耐熱性を比較する際には上記以外にも融点、熱伝導率、熱収縮、熱変形温度などの項目もあります。
医療用プラスチックにも使用される樹脂のなかで、耐熱性に優れている素材をピックアップして紹介します。
融点は280~290℃、連続使用温度は240℃という耐熱性を持った樹脂。荷重たわみ温度は130℃弱ですが、ガラス繊維入りの樹脂だと260℃以上まで耐えられます。耐薬性にも優れた機能を持つほか、引張強さや剛性など耐久性も高い素材です。
荷重たわみ温度は410℃、融点は600℃以上という耐熱性に優れた樹脂です。引張、曲げ、圧縮などの耐久性も高く、加工においても切削加工のしやすい素材でもあります。
「ウルテム」という商品名でも知られる、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)。150℃以上でも特性を保持するほか、耐熱水性、耐薬性にも優れています。
連続耐熱温度は175℃、荷重たわみ温度は174℃のスーパーエンジニアリングプラスチック。耐熱性をさらに高めるガラスファイバーの入りPSFだと180℃まで耐えられ、安定した品質を保持します。
200~260℃のスチームを浴びても連続使用ができ、プラスチックのなかで優れた耐熱水性を持ちます。耐薬性も持ち合わせ、酸やアルカリにも強く高温環境でも使用可能です。
連続耐熱温度は180~190℃、荷重たわみ温度は200℃以上という耐熱性に優れた樹脂。医療用プラスチックに使用されることは少ないものの、酸やアルカリにも強く電気・電子分野、自動車・機械分野などで活用されます。
医療機器に使用するプラスチックは、自社のニーズに合わせて柔軟に対応してくれるメーカー選びも重要です。
医療用プラスチックは、耐熱性だけでなく酸やアルカリ、有機溶剤などにも強い耐薬性や、強い衝撃などにも耐えられる耐久性といった観点から選ぶことも重要です。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325