医療機関で使用される生体情報モニターは、呼吸や体温、血圧といった物理的な生体情報を電気信号に変換して表示します。この変換の役割を担うセンサーデバイスをトランスデューサと呼びます。血圧の連続的なモニタリングやインフレータブルデバイスの制御など、医療の現場で大きな役割を果たしています。
医療用のトランスデューサは、感染防止を目的としたディスポーザブル(使い捨て)化やコストダウンの観点から、血液や薬液に触れる主要部分にプラスチック部品が広く用いられています。患者の命に関わる正確なデータ計測を支えるため、その樹脂部品の製造には高い寸法精度と信頼性が求められます。
流体ラインに組み込まれる圧力トランスデューサは、主に以下のようなプラスチック部品と電子部品(センサーチップ)で構成されています。それぞれの役割と製造時に考慮すべき点を解説します。
血液や生理食塩水が実際に通る流路となる部品です。内部に気泡が混入していないかを医療従事者が目視でチェックできるよう、ガラスのような高い透明性が求められます。そのため、透明度を落とさず、内部にヒケ(凹み)や歪みを生じさせない精密な成形技術が必要です。
圧力センサーチップや配線基板を収容し、外部の衝撃や水分から保護する土台となるパーツです。センサーを正しい位置に固定し続けるため、長期的な寸法安定性と剛性を確保する金型設計が求められます。
患者側のカテーテルや注射器、輸液ラインなどと接続するためのインターフェース部分です。世界標準規格であるルアーテーパーなどの寸法規格を厳密に満たし、着脱のしやすさと液漏れ防止(気密性)を両立させる高精度な加工が問われます。
つまみを引くことにより生理食塩水を勢いよく流し、ライン内の血液凝固(血栓)を予防するための機構部品です。微細なスプリング構造やバルブ構造を樹脂で再現する、複雑な機構設計ノウハウが必要になります。
センサーの測定精度を落とすことなく、医療現場での視認性や安全性を確保するため、部位ごとに適した樹脂選定が行われます。各素材の特徴と加工上の留意点を整理します。
ガラスのような高い透明性を備えながら、落としても割れにくい耐衝撃性を持つため、ハウジングやコネクタに広く使用されています。ただし、成形時の残留応力によってソルベントクラック(薬品によるひび割れ)が起きやすい性質があるため、応力を残さない適切な温度・圧力の成形条件管理が求められます。
ポリカーボネートと同等以上の優れた透明性を持ち、光の歪みが少ないことから、内部の流体を観察するドーム部に採用されることがあります。生体適合性にも優れていますが、表面に傷がつきやすいため、金型の鏡面仕上げ技術と傷をつけずに金型から取り出す離型ノウハウが問われます。
優れた寸法安定性と剛性を発揮する素材です。トランスデューサをベッドサイドに固定するためのアタッチメント部や強固な外装筐体が必要な部分に使用されます。複数の部品を組み合わせる際の嵌合(かんごう)精度を出しやすいのが特徴です。
センサーチップに直接圧力を伝えるための薄い隔膜(ダイアフラム)や防水性を高めるOリングなどのパッキン部分に使用されます。測定精度に直結する数ミクロン単位の薄肉成形技術や硬質プラスチックと一体化させる二色成形などの技術が必要になる場合があります。
プラスチック筐体と電子部品を組み合わせるトランスデューサの製造は、単なる成形だけでなく、その後の組み立て・接合の工程が品質を大きく左右します。
ドームやハウジングの基本形状を作ります。センサーが収まるミクロン単位のポケットや流路の滑らかさを正確に成形します。部品単体の寸法精度が出ていないと後の組み立て工程で液漏れの原因となります。
あらかじめ金型内にセンサーの端子や配線をセットし、樹脂を流し込んで一体化させる技術です。別々に作って組み立てる工数を削減できるほか、端子周りの隙間をなくし、防水性を飛躍的に向上させる効果があります。
流路となるドーム部と土台のハウジング部を接合する工程です。接着剤の成分が流路に溶け出すリスクを避けるため、超音波の振動摩擦熱で樹脂同士を溶かし合わせる超音波溶着や安全性の高い医療用UV硬化樹脂による接着が用いられます。接合面に微細な溶着リブを設計するなど、液漏れを防ぐためのノウハウが必須です。
トランスデューサの製造は、患者の命に関わる数値を扱うため、設計および加工技術に高い信頼性が要求されます。製造委託先を選定する際に確認しておきたい3つの技術的ポイントを解説します。
圧力センサーは、薄い隔膜を介して流体の圧力を感知します。センサーを取り付けるプラスチックの土台(ハウジング)にわずかでも反りやヒケ(凹み)があるとセンサー自体が歪んでしまい、正確な血圧測定ができません。樹脂の収縮率を正確に計算した金型設計とミクロン単位の平面度を安定して量産できる成形技術が必要です。
血圧測定ラインにおいて、トランスデューサ内部に気泡が残っているとその気泡がクッションの役割を果たしてしまい(ダンピング効果)、圧力波形が鈍って不正確な血圧が表示されます。気泡が滞留しないよう、流路に段差や死角を生じさせない滑らかな金型設計が重要です。また、流体の抵抗を減らすための、金型の高度な鏡面磨き技術も問われます。
血液や生理食塩水がセンサーの電子回路側に漏れ出すと機器のショートや不正確な測定につながり、患者への深刻なダメージを引き起こすリスクがあります。ドーム部とハウジング部を接合する際、ミクロンレベルの隙間も許されません。
そのため、高度な超音波溶着技術を有しているのはもちろん、クリーンルーム環境下での組み立てや全数リークテスト(漏れ検査)体制が完備されているメーカーを慎重に選定することが重要です。
医療用トランスデューサは、感染防止やコストの観点から血液や薬液に触れる主要部分にプラスチック部品が用いられ、現代の医療現場において欠かせないデバイスです。その製造においては、気泡の滞留を防ぐ滑らかな流路設計、センサーを歪ませない平面度、そして回路のショートを防ぐ完璧な液漏れ防止技術など、高度な精密加工と組み立てノウハウが求められます。
委託先を選定する際は、単なるプラスチック成形技術だけでなく、こうした医療用センサー特有の要件を深く理解し、品質管理体制を敷いている実績あるメーカーを見極めることが成功の鍵となります。
以下のページでは、医療用プラスチック部品の製造に対応している加工・成形メーカーをご紹介しています。委託先選びの比較・検討に、あわせてお役立てください。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325