コロナ禍において、発熱検査機、体温計を使う頻度がかなり増えました。とりわけ店舗や施設にある非接触型体温計は、見ない日はないと言ってもいいほど。この発熱検査機、体温計の部品にはどのようなプラスチックが使われているのでしょうか。
たとえば、手で持って使うタイプの非接触体温計の本体にはABS樹脂が使われます。体温計のプラスチックには、これといって特殊な性能は求められないので汎用プラスチックで本体を作ることが多いようです。
体温計の本体部分は、ABS樹脂などで作られています。ABSは、アクリロトリル、ブタジエン、ポリスチレンの3つの成分の頭文字を取ったもの。アクリロトリルの耐熱性と機械的強度、耐油性、ブタジエンのゴムの特性、ポリスチレンの光沢性、加工性、安定性といった特性をもつ樹脂です。
それぞれの成分の長所を持っていて、かつ光沢があるので、外観が重要な製品にも使われることが多くあります。表面加工が加工なことから、印刷や塗装、メッキ、切削、溶接も容易です。
弱点としては、日光や紫外線によって強度が劣化してしまうこと、耐熱性はある程度あるが可燃性なので燃えること、加工中には独特の臭気が発生すること、などが挙げられます。
このほか、ブタジエンをほかの成分に変えることで機能を変化させた樹脂もあります。アクリルゴムに変えることで耐光性が増したASA、塩化ポリエチレンが加わったことで物質が柔らかくなり、耐熱性と対衝撃耐性が増したACS、エチレンプロピレンジエンゴムに代わることで耐寒性を獲得したAESなどがプラスチックの成形に使われます。
発熱検査機・体温計にエンプラが使われている例は見つけることができませんでした。
発熱検査機・体温計にスーパーエンプラが使われている例は見つけることができませんでした。
成形加工は、金型にやわらかくなった樹脂を押し込んで固めることで部品を作る方法。樹脂は高温になると柔らかくなるものがあり、これを大きな圧力で押し込みます。冷えると固まり、プラスチック部品となるのです。
効率よく大量生産できるというメリットがありますが、金型の設計と製造に時間とコストがかかるというデメリットもあります。
切削加工は、棒材や形材を刃物で削り落として目的の形を作るというもの。手作業で行う場合は工数が多くてコストもかかりますが、複雑で精度の高い加工が可能です。
NC旋盤やマシニングセンターを使い、自動で加工することもできます。
医療機器用のプラスチック部品製造に対応している製造会社から、製品開発でよくあるニーズ「品質」「スピード」「量産体制」でそれぞれおすすめの製造会社をピックアップ。対応できる樹脂が多かった順(※1)に並べて紹介します。
【選定基準】
Googleにて「医療機器 プラスチック部品」と検索した際の上位20社中、対応樹脂が明記されていた下記の3社を選定。(2021.11.11時点)
・若林精機工業:調査した20社の中で、製品の品質を称える賞の受賞歴があり、 2大品質表示ISO9001、14001を唯一どちらも取得している企業
・ミヤザキ:調査した中では短納期NO1
・南デザイン:調査した中では唯一ロット数が明確で多かった
(※1)樹脂数は樹脂名が記載されている数を採用しています
(※2)参照元:大阪府HPhttps://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=42325